理念
「多くの人々の利益りやくのために、
多くの人々の幸福のために」
中村元訳『ブツダ最後の旅』岩波文庫より
合掌
この度、上記の「仏の誓願」を願いとして、「いのち」を主題とし、仏教を基にし、将来に活かせる日本的な「いのち」へのかかわりの理論と方法と実践を開拓していくことを志向して、標記「仏教看護・ビハーラ学会」を設立いたしました。
本会は、看護やターミナルケアだけでなく医療・福祉・教育などの、「いのち」を巡って関係しあい重なりあっている諸問題を、問題分野ごとに、あるいは総合的に、「仏教」を基調として問い直すことを目的としています。
また、本会の第二の目的は、「日本的」という個別性を強調し、独自性に自信をもった理論や方法論の構築と実証を、自らを特別扱いしたり独善的にならないように常に客観視しながら、将来のために提示し実践していくことにあります。
「いのち」の問題を、仏教を経(縦糸)として、各専門分野の学を緯(横糸)に、我々の思惟と活動を梭ひ(機織機の横糸を通す道具)として一枚の布に織り上げ、それを着心地の良い衣服に仕立て上げたいと考えています。
そのような織り上げ方と仕立て方を示すことができるならば、それらの方法は世界中のどの民族衣装でも洋服にでも活用される可能性があるはずです。
現代の「いのち」を巡る諸問題は、そのほとんどが現代の文明と社会の副産物といえるものかと思われます。そのような副産物を生まざるを得なかった現代文明や社会と、不可分な関係に近代以降の科学はあります。それらの諸問題を科学のみで解決を図ろうとし、科学の発展・発達のみが問題解決を可能にすると考えている人たちも多いのですが、それは錯覚ではないかと私たちは考えています。
仏教のみならず宗教の根本課題の一つが「いのち」の問題です。何れの世界宗教も二千年余に渡って「いのち」の問題を考え、その都度応えてきました。
今こそ、諸科学と宗教の知恵や方法を総動員しなければ、根本的な打開策は生まれないと考えています。
そこで、「いのち」を巡って関係しあい重なりあっている諸問題を、一宗一派の教義に偏らない超宗派の仏教を通して吟味したいと考えています。
これまで、発起人代表の藤腹は現代看護学に仏教の知恵や方法を活かした「仏教看護論」を日本的な看護論の一つとして、田宮はターミナルケアの問題に仏教を活かした「ビハーラ」を日本的な看取りの在り方の一つとして提言してきました。それぞれの研究や提言の過程で、多くの人々から賛同のみならず批判も併せて頂戴いたしました。
同時に、「いのち」を巡って顕在化している諸問題について、仏教・医療・看護・福祉・教育・等々を共通のキーワードとして、一同に会し、話し合い、研究し、そして実践に結び付けていけるならば、なんと素敵なことかという希望を、これまた多くの人から承りました。
そこで、同志と申し上げても過言ではない中堅・若手を中心とした発起人の人たちと共に、鷹司誓玉善光寺上人、水谷幸正先生、大井玄先生を顧問として、標記「仏教看護・ビハーラ学会」を設立いたしました。本会への格別なご理解と、ご参加を願いまして、ここにご案内申し上げます。 再拝
平成30年3月 吉日
仏教看護・ビハーラ学会
発起人代表:藤腹 明子・ 田宮 仁